第2部 削る · 第5回 / 全12回 · 10分くらい
同時に進めるのは2つまで。やめる一覧を作る
第1回で、抱える数が多いほど1つが出るまでの時間が延びることを計算しました。この回では、実際に抱える数を減らします。進めるものを選ぶ基準と、選ばなかったものを安心して置いておく方法を決めます。
履修 0 / 12 回
この回を読み終えると、できるようになること
- 同時に進める数に上限を置く理由を、リトルの法則と思い出す費用の両面から説明できる
- 作りかけから、今進める2つを基準をもって選べる
- 選ばなかったものを「止める」「やめる」に分け、元に戻せる形で置いておける
専門用語は、初めて出たところで括弧に短い説明を付けています。説明が長くなるものには ※番号を付け、ページの終わりの用語メモにまとめました。
1なぜ2つなのか
1つだけにすると、それが行き詰まったとき(審査待ち、人の返事待ち、どうしても解けない不具合)に、手が止まってしまいます。2つあれば、片方が待ちのあいだにもう片方を進められます。
3つ以上になると、第1回で見たとおり、1つが出るまでの時間が延び、思い出す費用も増えます。2つは、待ち時間をむだにせず、かつ抱えすぎない、ちょうどよい数だと自分は考えています。工場やチームの仕事の流れを管理するカンバン※1でも、作業中の数に上限を置くことが基本になっています。
2進める2つを選ぶ基準
作りかけが多いと、どれも大事に思えて選べません。次の3つの質問で比べると選びやすくなります。
- 出すまでの距離:いちばん小さく出す形まで、あとどれくらいか(近いものを優先)
- 目標とのつながり:自分が決めた目標(収入、学び、発信)に、出すことがどれくらい効くか
- 待っている人:最初の1人がもう決まっていて、待っているか
3つとも高いものが1つ目。残りから、1つ目が待ちのときに進められるものを2つ目に選びます。
3選ばなかったものは「止める」か「やめる」
選ばなかった作りかけは、2つに分けます。
- 止める:いつか再開したい。引き継ぎのメモ(どこまでできたか、次に何をするか)を書いてから、手を止める
- やめる:もう再開しない。何を学んだかを1行書いて、置き場所を分けておく(消さない)
どちらも、消さずに、戻れる形で置いておくのが大事です。戻れるとわかっていれば、手放すのが怖くなくなります。git のリポジトリならそのまま残し、README の先頭に「止めている(理由・再開の条件)」を書いておくだけで十分です。
4新しく始めたくなったら
新しい思いつきが来たら、すぐには始めず、思いつきの一覧に書きます。今の2つのうち1つを出し終えたとき、その一覧から次を選びます。
どうしても今始めたいなら、今の2つのうち1つを「止める」に移してからにします。入れ替えはしてよいのですが、3つ目を足すことはしない。この決まりを1つ守るだけで、作りかけの数は増えなくなります。
5上限を、見える形にする
決まりは、見える場所に置かないと守れません。作業の一覧(紙でも、アプリでも、ファイルでも)に「進めている(最大2つ)」「止めている」「やめた」「思いつき」の4つの欄を作り、今どれがどこにあるかを一目でわかるようにします。
週に1回、この一覧を見直して、「進めている」が2つを超えていないか、止めたまま3か月たっているものがないかを確かめます。3か月止めたままなら、「やめる」に移すかどうかを考える時期です。
誤解よくある思い違い
作りかけをやめるのは、それまでの時間を無駄にすること
かけた時間は戻りませんが、学んだことは残ります。やめるのは、残りの時間を出せるものに使うための判断です。
気分に合わせていくつも進めたほうが、楽しく続けられる
楽しさは大事ですが、出せないまま続くと、だんだん重くなります。2つに絞って1つ出すと、その達成感が次を続ける力になります。
演習手を動かして確かめる
演習1
次の5つの作りかけから、今進める2つを選び、残りを「止める」「やめる」に分けてください。
- 文章アプリ:主な機能は動く。目標は年内に販売。この1か月は手をつけていない
- 画像管理アプリ:毎日少しずつ進めている。年内に販売したい
- マインドマップアプリ:楽しく作っているが、出す相手はまだ決めていない
- 音楽再生アプリ:画像管理アプリの部品として使っている
- 文字を打つ練習アプリ:半年前から止まっている
答えを見る
例:進めるのは 2(画像管理) と 1(文章アプリ)。どちらも年内の販売という目標に直結し、主な機能が動いていて出すまでの距離が近いからです。
4は2の部品なので、2の作業の一部として扱います(独立した作りかけとして数えない)。3は「止める」(相手を決めてから再開)。5は「やめる」か、学んだことを1行書いて置いておく。1は1か月止まっているので、まず引き継ぎのメモを読み直すところから再開します。
頼み方そのまま使える頼み方の例
自分の作りかけの一覧から、今進める2つを一緒に選んでください。
1. それぞれについて「出すまでの距離」「目標とのつながり」「待っている人」を高・中・低で評価する
2. 進める2つと、選んだ理由
3. 残りを「止める」「やめる」に分け、止めるものには再開の条件を1行で書く
何も消さず、移す・書く作業もまだしないで、案だけ出して止まってください。
自分の目標:(ここに書く)
作りかけの一覧:(第1回で作った表を貼る) 用語メモ本文の ※番号の説明
- ※1カンバン もとはトヨタの生産方式で使われた、仕事の流れを見えるようにする仕組み。ソフトウェア開発では、作業を「これから・作業中・完了」などの欄に並べ、作業中の数に上限を置いて、流れを滞らせないようにする。 本文へ戻る ↩
出典確かめた資料(2026年10月時点)
- Wikipedia「Little's law」 抱える数と、1つが仕上がるまでの時間の関係(第1回)。
- Kanban University「The Official Kanban Guide」 作業中の数に上限を置く考え方。