第7部 グラフのあと(2026年のいま) · 第16回 / 全20回 · 15分くらい
仕事の流れをAIに組ませるとき、何を渡すか
2026年には、AIが仕事の中身を見て、その場で手伝い役を割り振る「動的ワークフロー」が使えるようになってきました。この回では、任せる側として何を渡し、何を見て、どこで任せるのをやめるかを整理します。
履修 0 / 20 回
この回を読み終えると、できるようになること
- 人が流れを決める組み方と、AIが流れを組む組み方の違いと、それぞれの弱みを説明できる
- AIに流れを組ませるときに渡す4つのもの(終わりの条件・上限・触らせない場所・確かめ方)を書ける
- うまくいった流れを固定して使い回す判断ができる
専門用語は、初めて出たところで括弧に短い説明を付けています。説明が長くなるものには ※番号を付け、ページの終わりの用語メモにまとめました。
1人が流れを決めるか、AIが組むか
第6部では、流れを人が決めました。動的ワークフロー※1では、まとめ役のAIが仕事を見て、何人に分けるか、どう分けるかをその場で決めます。入門編でも触れたとおり、Anthropic の Claude Managed Agents では、2026年10月にこの仕組みが試験提供として公開されています(2026年10月時点の情報です)。
AIが流れを組むやり方は、思いがけない仕事に強い一方で、放っておくと作業を広げすぎることがあります。人が決めた流れは毎回同じに動きますが、想定していない仕事には弱い。どちらにも向き不向きがあります。
2渡すのは4つ
- 終わりの条件:何がそろったら終わりか。「調べ終わったら」ではなく、「候補を3つ、それぞれ根拠のリンクつきで」のように確かめられる形で
- 上限:手伝い役の数、1人あたりの時間、全体の費用。第15回で見たとおり、人数を増やすと費用は掛け算で増える
- 触らせない場所:読むだけのフォルダ、使わせない道具、送信や削除を伴う操作
- 確かめ方:誰が、何を基準に合否を決めるか(第10回)
どれも、これまでの回で学んだことです。流れを組むのがAIに移っても、この4つを決めるのは人の仕事として残ります。
3大きな仕事は、まず計画だけを出させる
大きな仕事なら、いきなり走らせず、まず計画だけを出させて読みます。見るところは次の3つです。
- 分け方が細かすぎないか(手伝い役が10人いても、仕事が3つしかないなら7人は無駄)
- 確かめる段が入っているか
- 消す・上書きする・外に送る作業が含まれていないか。含まれていたら、そこだけ人の確認を挟む
計画の段階で直すのが、いちばん安くすみます。走り出したあとで止めると、途中までの費用はそのままかかります。
4くり返す仕事は、流れを固定する
AIが組んだ流れがうまくいったら、それを決まった流れ(スクリプト)として保存し、次からはそれを使う、という使い方があります。毎回組ませると、毎回違う流れになり、結果を比べられません。どこで失敗したかも追いにくくなります。
自分は、仕組みの点検(気づかないうちに壊れている所を探す仕事)をAIに分担させて進め、うまくいった分け方を手順書に残しています。次からは、その手順書の流れで点検します。
5本当にAIに組ませる必要があるか
毎回同じ流れになる仕事に動的ワークフローを使うと、費用とばらつきが増えるだけです。仕事の形が毎回違うときに限って使う、と決めておくと迷いません。
もう1つの目安は、「調べる仕事」と「直す仕事」を分けることです。原因を広く探す調べものは、分担して同時に進めると速くなります。一方で、見つかったものを直す作業は、本番のデータや履歴に触れることが多いので、1つずつ人が確かめながら進めるほうが安全です。
誤解よくある思い違い
AIが流れを組めるようになったので、人は目標だけ伝えればよい
終わりの条件・上限・触らせない場所・確かめ方を決めるのは、これからも人の仕事です。ここが曖昧だと、作業が広がりすぎます。
演習手を動かして確かめる
演習1
「競合のサイトを調べて、うちの改善案を出して」とAIに任せたところ、30のサイトを調べ、費用が想定の10倍になりました。渡すべきだった4つのものを書いてください。
答えを見る
- 終わりの条件:「改善案を3つ。それぞれ、参考にした競合サイトのページを1つ以上付ける」
- 上限:「調べるサイトは5つまで。手伝い役は最大3人」
- 触らせない場所:「調べるだけで、うちのサイトのファイルは変更しない」
- 確かめ方:「改善案ごとに、根拠のページが実在するかを確かめる」
加えて、走らせる前に計画だけを出させていれば、30のサイトを調べる計画の段階で止められました。
頼み方そのまま使える頼み方の例
次の仕事を、手伝い役に分けて進める計画を立ててください。まだ実行はしないでください。
- 終わりの条件:(ここに書く)
- 上限:手伝い役は最大◯人、1人あたり◯分まで
- 触らせない場所:(フォルダや道具)
- 確かめ方:(誰が、何を基準に)
計画には、手伝い役それぞれの担当・返す内容の形・確かめる段を入れてください。消す・上書きする・外に送る作業があれば、はっきり分けて書いてください。 用語メモ本文の ※番号の説明
- ※1動的ワークフロー まとめ役のAIが、仕事の中身を見て、その場で手順の分け方や手伝い役の数を決める仕組み。人が前もって流れを決める組み方の反対にあたる。 本文へ戻る ↩