第6部 グラフ · 第15回 / 全20回 · 15分くらい
グラフを組む。窓を分けて、判断を形にする
第5世代、グラフです。実践編では「たくさんのAIを並べる」ことより、「窓(文脈)を分ける」ことに目を向けます。グラフのいちばんの効き目はそこにある、と自分は考えています。Anthropic の記事にある組み方の型と、費用の実測を手がかりに進めます。
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この回を読み終えると、できるようになること
- AIの仕組みの組み方の型を5つ挙げ、それぞれ向いている仕事を言える
- サブエージェントで窓を分けると何が良くなるのかを、窓の中身の面から説明できる
- 複数のAIで組むと費用がどれくらい増えるかを知り、分けるかどうかを判断できる
専門用語は、初めて出たところで括弧に短い説明を付けています。説明が長くなるものには ※番号を付け、ページの終わりの用語メモにまとめました。
1組み方の型は5つある
Anthropic の記事「Building effective agents」では、AIを組み合わせるときのよくある型を、次のように整理しています。
| 型 | やり方 | 向いている仕事 |
|---|---|---|
| つなぐ | 前の段の出力を、次の段の入力にする | 決まった順番で進む仕事(下書き → 直し → 整形) |
| 振り分ける | 入力の種類を見て、専用の処理に回す | 問い合わせの種類ごとに対応が違う仕事 |
| 並べる | 独立した仕事を同時に進める、または同じ仕事を何回かやって多数決 | 調べものを分担する、判定を固める |
| まとめ役と手伝い役 | まとめ役が仕事を分け、手伝い役に任せ、結果をまとめる | どう分ければよいか、前もって決められない仕事 |
| 作る役と評価する役 | 作る役の出力を、評価する役が見て差し戻す | 合格の基準がはっきりしている仕事 |
上の3つは流れをコードで決めるワークフロー、まとめ役の型は分け方をAIが決めるものです。同じ記事は、ここでも「単純なものから始める」ことを勧めています。
2窓を分けると、何が良くなるのか
Claude Code のサブエージェント※1は、ドキュメントによると、自分専用の窓で、専用の指示・決めた道具・独立した権限で動きます。そして、作業の結果だけをまとめ役に返します。
これが効くのは、次の2つの理由からです。
- まとめ役の窓が汚れない:手伝い役が調べものの途中で読んだ大量の資料は、まとめ役の窓に入りません。まとめ役には結論だけが届くので、最後まで注意が散らずに判断できます。第6回で見た「長くなるほど劣化する」を避けられます
- 評価する役が甘くならない:評価する役は、作った過程を見ていません。同じ窓の中で作って評価すると、自分の作ったものに甘くなりがちです(第10回の「自分びいき」)。窓を分けると、それが起きにくくなります
3サブエージェントの決め方
Claude Code では、サブエージェントを1つのファイルで決められます。役割・使ってよい道具・使うモデルを書いておくと、まとめ役が、説明文を見て必要なときに呼び出します。
道具を絞った評価役は、読むことはできても書き換えられないので安全です。ただし、Bash(コマンドを実行する道具)を渡すと、コマンドでファイルを書き換えられてしまいます。読むだけの役には、Bash も渡さないのが確実です。テストを走らせる必要があるなら、それはまとめ役の仕事にして、評価役は結果を読むだけにします。
---
name: reviewer
description: 変更が仕様どおりかを確かめるときに使う。書き換えはしない。
tools: Read, Grep, Glob
model: opus
---
あなたは確かめ役です。仕様と変更を読み、
合否と根拠(ファイル名と行番号)だけを返してください。 読み方:--- で挟んだ部分が設定です。tools に書いた道具だけが使えます。ここでは読む・探すの3つだけで、書き換えやコマンドの実行はできません。
4受け渡しの形を決めておく
手伝い役からの返事は、まとめ役にとっての入力です。第4回の「出力の形を決めておく」が、ここでそのまま効きます。何を返すか(合否、根拠、まだ解けていない点)を決めておかないと、まとめ役は毎回違う形の返事を読み解くことになります。
自分は、評価役には「合否は 合格 / 不合格 / 判断できない のどれか」「根拠はファイル名と行番号」「直し方の案は3つまで」のように、返す形を指示の中で決めています。
5費用は掛け算で増える
Anthropic が自社の調べもの用の仕組みについて書いた記事では、エージェントはふつうの会話の約4倍、複数のエージェントを組んだ仕組みは約15倍のトークンを使ったと報告しています。速さや質は上がりますが、その分の費用に見合う仕事でなければ割に合いません。
同じ記事は、全員が同じ文脈を共有する必要がある仕事や、手伝い役同士の依存が多い仕事は、複数のエージェントに向かない、とも書いています。1人で十分な仕事を5人でやるのは作りすぎです。まず1人でやってみて、窓が足りない、時間が足りないと確かめてから分けます。
6決まった流れはコードで、判断はAIで
「調べる → 書く → 確かめる」が毎回同じなら、流れそのものはスクリプトで書き、それぞれの段の中身だけをAIに任せます。流れまでAIに任せるのは、流れが毎回変わる仕事だけで十分です。
流れをコードで書いておくと、どの段で失敗したかが記録からすぐにわかり、その段だけを直したり、やり直したりできます。第14回の「決まった分かれ道はコードに出す」と同じ考え方です。
誤解よくある思い違い
AIを何人も並べれば、それだけ賢くなる
効き目の多くは、窓を分けて注意が散らないことから来ます。人数を増やすと、費用は掛け算で増えます。
道具を絞っていれば、評価役はファイルを書き換えられない
Bash を渡していると、コマンドで書き換えられます。読むだけの役には Bash も渡しません。
この段が要るとき
- 調べものが多く、1つの窓に収まらない
- 作る役と評価する役を分けたい
- 分かれ道や同時進行が、くり返しの中に出てくる
要らないとき(ここで止めてよい)
- 1つの会話で収まる作業
- 費用が何倍になっても割に合う理由を、まだ言えない
演習手を動かして確かめる
演習1
次の仕事は、5つの型のどれで組むのがよいでしょうか。
- 毎週、5つの競合サイトの更新を調べてまとめる
- 問い合わせメールを、請求・不具合・その他に分けて、それぞれ別の返信の下書きを作る
- 記事を書き、文体ルールに合っているかを確かめ、合っていなければ直させる
答えを見る
- 並べる。5つのサイトの調べものは互いに独立しているので、同時に進めてから1つにまとめる
- 振り分ける。最初に種類を決め(形を決めた出力で、第4回)、種類ごとの処理に回す
- 作る役と評価する役。合格の基準(文体ルール)がはっきりしているので向いている。評価役は別の窓にして、差し戻しの回数に上限を付ける
演習2
ふつうの会話で1回100円かかる調べものを、複数のエージェントで組み直すと、費用はおよそいくらになると見込めるでしょうか。それでも組み直すのは、どんなときですか。
答えを見る
Anthropic の報告(約15倍)を当てはめると、およそ1,500円です。組み直すのは、①1つの窓に収まらないほど材料が多い、②同時に進めることで時間が大きく縮む、③結果の質の差が、その費用に見合う、のどれかがはっきりしているときです。まず1人で試して、どこが足りないかを確かめてから判断します。
頼み方そのまま使える頼み方の例
次の仕事を、5つの型(つなぐ・振り分ける・並べる・まとめ役と手伝い役・作る役と評価する役)のどれで組むのがよいか考えてください。
- 選んだ型と理由
- 窓を分けるなら、どの役をサブエージェントにするか。それぞれに渡す道具(読むだけの役には Bash を渡さない)
- 手伝い役から返す内容の形
- 1人でやる場合と比べた、費用の見込み
まだ作らずに、案だけ出して止まってください。
仕事:(ここに書く) 用語メモ本文の ※番号の説明
- ※1サブエージェント まとめ役のAIから呼び出される、手伝い役のAI。自分専用の窓・指示・道具・権限で動き、作業の結果だけを返す。Claude Code では
.claude/agents/にファイルを置いて決められる。 本文へ戻る ↩
出典確かめた資料(2026年10月時点)
- Anthropic「Building effective agents」 組み方の型(つなぐ・振り分ける・並べる・まとめ役と手伝い役・作る役と評価する役)、単純なものから始める考え方。
- Anthropic「How we built our multi-agent research system」 エージェントは会話の約4倍、複数のエージェントは約15倍のトークンを使う。向かない仕事。
- Claude Code Docs「Create custom subagents」 専用の窓・指示・道具・権限で動く。利用の上限はまとめ役と共通。